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興福寺・東大寺 訪問記 その5 [雑記]

さて、大仏殿を出て、東へ向かう。

斜面を登っていくと、正面に、一目見てそれとわかる特徴的な屋根を持ったお堂が見えてくる。
法華堂(三月堂)だ。
その特徴的な屋根は、建立が東大寺以前にこの地にあった金鐘寺という寺院まで遡る正堂と、鎌倉時代に再興した礼堂を一つにつなげたため。
このお堂は建物自体も国宝だが、堂内も国宝の仏像がいっぱいだ。
その多さは興福寺の北円堂に勝るとも劣らない。

四隅には最早定番と言っていい四天王立像(国宝)。
それぞれ像高は3mほど。
本尊の左右に、それぞれ像高4mにもなる、梵天・帝釈天立像(国宝)。
向かって右が梵天、左が帝釈天ということだが、この2像は名前の取り違えの可能性もあるらしい。
歴史が長く、また、創建当時から現存する建物も少ないので、寺内での仏像の移動もかなり多かったようだ。
そのために仏像の由来等にも混乱があるのだろう。
さらに、四天王の前衛組の内側には、金剛力士がそれぞれ向かって左に阿形、右に吽形(国宝)。
こちらも像高3mと、堂内の像としてはかなり大きい。

そして、これらの仏像を統べるように、中央須弥壇上にその堂々とした姿を見せているのが、本尊の不空羂索観音菩薩(国宝)だ。
像高そのものは約3.6mと、両脇の梵天・帝釈天より低いが、須弥壇の上にあるため、頭部の位置は堂内で一番高く、堂内を見下ろすかのような貫録を感じる。
また像の後ろは板状の光背ではなく、多くの光条が放射状に並び、光背と言うよりは光輪と言った方がいいようなものとなっている。
まさに「後光が差す」とはこのことか、と思われる。
額に縦の三つ目を持つ三目八臂のその姿は、堂内の仏像としてはかなり大きめの他の像さえも圧倒する存在感を放つ。
そして、頭部にかぶる宝冠は、天平工芸の粋を極めた、豪華で細かく手が入った素晴らしいものだ。
この宝冠だけが東京の国立博物館での特別展に出展されたほど。

実は、この不空羂索観音菩薩、自分が好きな仏像ベスト4のひとつだ。
自分はそんなに仏像に詳しいわけではないので、細かいところを突っ込まれると困るのだが、
まずはその名前に惹かれた。なんかカッコイイ。
次いでその姿。堂々とした体躯に8本の腕、とても迫力を感じる。
仏像だらけの法華堂内でも、他に並ぶものなしのその存在感。

ちなみにベスト4の残り3つは、いずれも法隆寺にある。
法隆寺金堂の真ん中に鎮座する釈迦三尊像。
夢殿の秘仏である救世観音像。
大宝蔵院に安置してある百済観音像。
今回はこれらは主題でないので詳しく述べることはしない。

話を戻そう。
この法華堂、内部の正面側が、壁を背に腰掛けることができるようになっている。
大仏殿ではあれほどいた観光客も、幸か不幸か法華堂内は少ない。
なので、文字通り腰を落ち着けて、じっくりと仏像を堪能できるのだ。
しかも、不空羂索観音像の周囲が以前よりスッキリして、その姿が非常によく見える。
というのも、2011年から2013年にかけて堂内の修理を行い、その際に、他の6体の仏像を東大寺ミュージアム(これについては改めて触れる)へと移されたためだ。
その中には著名な(伝)日光菩薩・月光菩薩(いずれも国宝)も含まれている。
それまでは、この両菩薩が本尊の脇侍のように配置されていた。

上述のように6体もの仏像を移動したにも関わらず、国宝の仏像が10体も並んでいる。
あれ、数が合わない?
四天王が4体、金剛力士が2体、梵天・帝釈天が2体、そして本尊が1体、計9体?
実は、本尊の後ろの厨子内に安置されている秘仏があるのだ。
仏像の名は執金剛神像、見ることができるのは年に1度、12月16日のみ。
残念ながら自分はまだ見たことがない。

さて、思う存分法華堂内を堪能した後は、すぐ北にある二月堂へ。
お水取りの行事で有名だ。
こちらは内部に入らず、周囲の通路と舞台をぐるりと周るだけなので、拝観料はいらない(^^;)
だからか、法華堂よりも人が多いぞ。

このあとどうしようかちょっと迷った。
というのは、小学生の時以来登っていない若草山にも行ってみたかったからだ。
若草山から見る大仏殿の屋根と、周囲の緑の景色をもう一度見てみたかった。
思い出補正がかかっているかもしれないが、とてもいい景色だった覚えがある。
しかし、若草山へ登ってしまうと時間が足りなくなり、これまで見たことがなく今回ぜひ行こうと思っていたところへ行く時間がなくなってしまいそうだったので、結局若草山はあきらめ、西へ向かって長い石段を降りていく。

さて、次の目的地は・・・やっぱり「続く」だ!

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コメント 4

middrinn

和辻哲郎『古寺巡礼』(岩波文庫,1979)に、同行者の「Z君[原善一郎]は、
三月堂の他の諸像をほとんど眼中に置かず、ただ不空羂索観音と梵天(月光)
とを、特に不空羂索観音を、天平随一の名作だと主張した。それにはわたくしも
なかなか同意はできなかった。天平随一の名作を選ぶということであれば、
わたくしはむしろ聖林寺の十一面観音を取るのである。」云々とあるのに対して、
町田甲一『大和古寺巡歴』(講談社学術文庫,1989)は不空羂索観音の素晴しさ
を力説してました(〃'∇'〃) 既に同書をお読みだったら、失礼しましたm(__)m
by middrinn (2019-05-27 16:53) 

enokorogusa

恥ずかしながら、言うほど自分は仏像を見たり、関する書を読んだりしてなくて(^^;)
詳しい方から見たらツッコミどころがいっぱいかと。
middrinnさん、面白そうな本をご紹介いただきありがとうございます(^^)
和辻哲郎『古寺巡礼』の方は市内の図書館にあるようなので、今度読んでみます。
町田甲一『大和古寺巡歴』は残念ながらありませんでしたが、同氏の著書が他にありましたので、そちらを読んでみたいと思います。
聖林寺の十一面観音、こちらもいつか見てみたいです。
by enokorogusa (2019-05-27 20:38) 

燃焼豚

昔、中近東の外国人の金持ちが大仏を買いたいと言っていたが、あちらは偶像崇拝は禁止のはず、持って帰ってどうするのか凄く気になった。
by 燃焼豚 (2019-07-31 02:08) 

enokorogusa

そんなことがあったんですか。
単なる美術品として、ということなんでしょうかね?
それが通じるとはなかなか思えませんけどね。
それとも自分はこれだけ金持ってるぞとアピールしたかっただけかも?
by enokorogusa (2019-07-31 19:44) 

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