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ちょっと前のマンガ その2 『KATSU!』 ※ネタバレ注意 [コミック]

最近、マンガのレビューで取り上げるのがちょっと(いや、かなり?)マイナー作品ばかり。
一応自覚しております。
というわけで、今回は大御所の作品を持ってきましたよ。

『KATSU!』(作/あだち充)
 連載『週刊少年サンデー』2001年36・37号~2005年12号
 (少年サンデーコミックス 全16巻)

って、またビミョーな作品を!
でもしょうがないじゃん、読んじゃったんだもん。
まあ、せっかく読んだので軽く感想を残しとこうってことで。

いつものごとく、コミックスのあらすじを引用して軽く紹介。

光葉高校に入った里山活樹は、同級生の水谷香月に近づこうと彼女の父親のボクシングジムに入会。
ボクシング嫌いだった香月だが、やがて活樹を高校チャンピオンにすると宣言、活樹も徐々に本気モード。
活樹の父は元プロボクサーのラビット坂口。しかし本当の父親は亡き天才ボクサーの赤松隆介で、活樹はふたりの闘志を受けついでいる。
二年生になった活樹の前に強力なライバル出現、甲子園のヒーロー・岬新一がボクシングに転向したのだ。
    ~少年サンデーコミックス第11巻頭あらすじより

付け加えると、赤松隆介はラビット坂口との試合の1ヶ月後に死亡。
そのときすでに赤松隆介の婚約者は身ごもっており、生まれたのが活樹。
ラビット坂口はその婚約者と結婚(婿入り)して里山と名を替え、自分と赤松の件はあえて活樹には知らせていなかった。

『H2』が『タッチ』に勝るとも劣らない人気となり、自身の代表作に加わったあと、『いつも美空』という意欲作を連載するも、1年間あまりで終了を余儀なくされたあだち充。
そんな彼が次の作品に取り上げたのは、ボクシング。
あだち充でボクシングと言えば、『タッチ』で上杉達也が野球をする前にやっていたのが有名。
『スローステップ』でも出てきたらしいが読んでないので知らん。

今回この作品を読んだのは、連載時読んで以来初めて。
ストーリーはすっかり忘れていた。
活樹(かつき)と香月(かつき)という、字は違うが同じ名前の主人公とヒロイン。
というのは今回読みだしてすぐに思い出したが、それ以上は思い出せず。
ほとんど初めて読むような気分だった。

読んでみればあだち充得意の家族劇が盛りだくさん。
「血のつながらない親子」や「両親は離婚」など。
また、主人公にとって、競技でも恋でもライバルとなる天才(といわれる)が出てくるのもパターン。
そのライバルが特に恋愛に関しては図々しいのもパターン?

ヒロイン香月はボクシングに囲まれて育ったせいか、活発でサバサバした感じ。
あまり女性らしいところを見せない。
ボクシングの強さも相当なもので、女性としては驚異的。
『リングにかけろ』の高嶺菊並みか(^^;)
成長するにしたがって顕著になる男女の差で負けるのが悔しくて一時ボクシングを嫌いになっていた。
だが、活樹と出会うことで、自分の夢を活樹の中に見ることに。

物語中盤で活樹の告白に対し自分も「好きだよ」と答えるが、顔は横向き加減。
なかなか素直になれない性格。
後に、実は入試の時から活樹のことが気になっていたと告白するも、
「そんな素振りは全く(見えなかった)」という活樹に対し、
自ら「そういう性格でしょ」と。

そんな彼女だけに、活樹のことを好きだと認めるような言動がかえって可愛い(^^;)
ライバル岬新一に、活樹のどこが好きか聞かれて、やっぱり顔をそむけながら
「答えてもいいけど、時間かかるよ」
「いっぱいありすぎて」

母親からもっと女らしい恰好をしたらと言われても、普段から私服にジャージを着る。
ところが、活樹といっしょに初詣に行くときはさりげなくスカートをはく。
ま、風邪をひいた香月が活樹にそばにいてほしいと言ったりすることもあるが。
おとなしく活樹におんぶされていることもあるが。
あだち充にツンデレを描かせるとこうなるのか。

いずれにしろ、自分が読んだあだち作品のなかでは結構好きなタイプのヒロインだ。

そんな香月の性格もあってか、活樹と香月の仲はなかなか進展しない。
これもあだち充のパターン?
いや、考えてみたら、ラブコメは進展したら話が終わっちゃう。
だから、いかに自然に、進展しないようにしながら面白く描くことができるか。
それが作者のウデの見せ所と言えるのか?

そう考えると、あだち充は、やはり上手いのか。
読者のミスリードを誘ったり、人物の心象風景を微妙な表情だけで表したり。
ときには当人の中にコンプレックスを持たせたり。
決定的な場面をなかなか描かないことで「恋が進展しない」ようにしているように思える。

今作では結局二人は最終話最終ページでようやくキス
(黒いシルエットしか見えないのでそのように見えるだけだが)。

ちなみに、この二人は互いに最後まで「水谷」「里山」と名字で呼び合う。
下の名前だと同じ「かつき」という音になるからだと思うが。

自分は結構、呼び名にこだわるタイプ(^^;)
この二人のように名字で呼び合っているのがいきなり下の名前で呼び合うようになるのはあまり好きじゃない。
古くは『テニスボーイ』の「岡崎先輩」と「飛鷹くん」
最近では『からかい上手の高木さん』の「髙木さん」と「西片」
などは自然でいいと思う。

というわけで、この物語、恋愛に関しては一応決着が着く。
しかしボクシングに関しては、ちょっと中途半端な感は否めない。
活樹は高校チャンピオンになる。
しかしインターハイ含め公式戦では最大のライバルである岬とは戦わずじまい。
そして岬との最後の試合で、物語の最後となる試合も公式戦でなく、ジムでの非公式な練習試合。

また、話中にもうひとり、岬の親友で、高校中退でプロデビューした内田という男が出てくる。
活樹とも顔見知りとなり、自分の憧れである赤松隆介を「殺した」ラビット坂口の息子(のちに真実を知る)である活樹に対し強い敵対心を持つ。
「陽」の岬に対し、「陰」の内田。
せっかく二人のライバルを用意しておきながら、結局、活樹が内田と戦うことはなかった。

打ち切りというほどではないかもしれないが、内田をリングにあがらせて、さらに話を続けられるほどの人気はなかったのかもしれない。
それでも、活樹は、「父」ラビット坂口、香月、そして岬からも、赤松隆介の後を継いでほしいという期待を感じ、ボクサーとして生きる決意をする、という形で一応の決着はつけている。

作品全体の感想としては意外と面白かった。
物語の壮大さ?としては『タッチ』や『H2』には及ばなかったかもしれない。
しかし、香月のキャラも気に入ったし、活樹と香月の関係も、お互い好きだと言っておきながら、友達以上恋人未満的なのも読んでいて楽しむことができた。

ところで、あだち充が現在連載中の『MIX』は『タッチ』の30年後が舞台。
その中で達也以来30年、明青学園は甲子園から遠ざかっていると書かれているけど、この『KATSU!』の世界の中で、十数年ぶりに甲子園で試合をしていることが書かれている(^^;)


・・・忙しすぎて更新できないとか言っといて、ちゃっかりマンガは読んでたのかよ!
というツッコミは無しの方向で(^^;)

・・・最後までお読みいただきありがとうございます。
ところで、このブログのコミック記事の中で、『こち亀』のある記事を除くと、この『KATSU』が最も読まれているのです。
なぜだかさっぱりわかりません(^^;)
あだち作品の中では比較的マイナーといってもいいこの作品。
みなさん、なぜこの記事にたどり着いたのか、コメントを残していただけると幸いです

※2021年7月15日追記
WEBアプリの「サンデーうぇぶり」で今『KATSU!』が凄い人気みたい。
だからか、5日ほど前からこの記事のアクセス数が一気に増えてる。
検索して来てくれて読んでくれてるのかな?
最近なかなか更新できていないけれど、こうした以前の記事を読んでくれるのも嬉しいものです。
ありがとうございます。

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コメント 4

middrinn

「クロスゲーム」を毎週録画視聴してる小生ですが、
この作品は存在自体も知りませんでしたぁ( ̄◇ ̄;)
「家族劇」云々とありますけど、『みゆき』の系統
なのかしら(@_@;) むしろ『ラフ』かしら(@_@;)
ブックオフにあったら立ち読みしてみます(^o^)丿
by middrinn (2019-04-29 16:04) 

enokorogusa

実は『クロスゲーム』次に読もうと思ってたところ。
middrinnさんに心を読まれた?(^^)
家族内恋愛ではないという点では、『みゆき』よりは『ラフ』に近いと言えるかな?
今作では親子、なかでも父と息子という関係に特に焦点が当たってます。
ちょっとカッコ悪いと最初は思われた父親が実は・・・という感じで。
あだち充は、一見柔らかな絵のタッチの中にシリアスなテーマを隠すのが上手いような気がします。
by enokorogusa (2019-04-29 18:40) 

燃焼豚

KATSUは最初の頃、いつ野球漫画になるんだと思って読んでました。しかし、さすが巨匠、ボクシングシーンは迫力ありました。ちなみにあだち作品で一番強いのはtouchの原田らしい。
by 燃焼豚 (2019-05-14 19:16) 

enokorogusa

>KATSUは最初の頃、いつ野球漫画になるんだと思って読んでました。
すいません、思わず笑ってしまいました(^^;)
ヘッドギア?すると顔が隠れるので描き分けが大丈夫かと、いらない心配をしました(^^;)
by enokorogusa (2019-05-14 20:15) 

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