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ソウルコミック その4 『ブラック・ジャック』 [コミック]

ソウルコミック今回は泣く子も黙るマンガの神様のこの作品。

『ブラック・ジャック』(作/手塚治虫)
        連載『週刊少年チャンピオン』1973年11月19日号~1978年9月18日号
           その他1979年1月15日号~1983年10月14日号 不定期連載

あらためて説明するまでもなく、手塚治虫の代表作品のひとつ。
とはいえ、数多ある手塚作品で自分が読んだことがあるのはそんなに多くない。
というか、はっきり言って少ない。
他には、『三つ目がとおる』『火の鳥』『きりひと賛歌』『アドルフに告ぐ』くらいかな。
しかも、『ブラック・ジャック』以外の作品を読んだのは、高校生になって以降。
自宅で自然と手に取って読んでいた『ブラック・ジャック』は自分にとっては手塚治虫の一番の代表作なのだ。

今回、数十年振りに読んだのだが、残念ながら、最初の単行本シリーズではなく、手塚治虫漫画全集DX版「ブラック・ジャック」全22巻(2003年-2005年/講談社)だった。
何故だかわからないが、このシリーズは、発表順ではなく、よくわからないごちゃまぜの順番に載っている。
一話完結作品だからそれで物語が破たんするということはないのだが、やはり発表順に読みたいというのが本音だ。

主人公であるブラック・ジャックは必ずしも善人ではないし、かといって悪人であるかというとそうでもない。
それでもあえて言えば「偽悪者」とでもなろうか。
報われない善人というのも多数登場する。
医師の存在意義を問うような話もある。
内容で言えば、現在なら青年誌に掲載するのが適当だと思う話は数多い。
そんな作品を少年誌で連載していたのはある意味凄いと思う。

まあ、いずれにしろ、自分はこのマンガが大好きだった(今ももちろん好きだ)。
このマンガが身近にあったのは幸運だった。
自分がこのマンガから受けた影響は小さくないと思う。
誤解を招くといけないので念を押すが、この「影響」とは、手塚治虫の描いてることがすべて正しいということではないし、ブラック・ジャックの言動がすべて正しいということでもない。

さて、今回久しぶりに読んだのだが、あらためて思ったのは、やはり、一話一話の物語がとても面白いということだ。
さすがは手塚治虫といったところか。
次から次へと、いろんな人間ドラマを見せてくれる。
好きな話を選べ、と言われてもとても絞りきれない。
ほぼすべての話が記憶に残っているか、少なくとも読めば思い出す。

また、今回読んで初めて思ったのが、ピノコが可愛く感じたことだ。
子供の頃は、はっきり言ってピノコは好きじゃなかった。
むしろ、なんでこんなキャラを出すのかと思ったりもした。
それが、自分が年をとったからなのか、何故かわからないが、とにかく可愛いのだ。
アッチョンブリケ!
ピノコはまた、自分が覚えていた以上に、手術の助手として頑張っている姿が何度も描かれている。
あの何でも一人でやろうとするブラック・ジャックが信頼するというのはすごいことだ。

最初の単行本シリーズだと、ピノコは確か第2巻で登場したと思うが、彼女がいるおかげで、ブラック・ジャックが決して孤独ではないことがわかる。
というか、ピノコがいない孤独なブラック・ジャックでは、人並みに悩み苦しむ姿は描けなかったのではないだろうか。

他に自分の好きなキャラはドクター・キリコだ。
不治の病を負った患者を安楽死をさせるのを生業とし、ブラック・ジャックとはライバルともいえる関係。
だが、そんなキリコでも、ブラック・ジャックと協力するエピソードもあったりする。
このドクター・キリコを単純な悪人として描かないのも手塚治虫らしい気がする。

そして、この作品で知り、アッチョンブリケと同じくらい印象に残った言葉が「モグリ」だ(笑)
免許を持っていない、非正規の医者ということでよく出てくる言葉だが、最初は意味がわからなかった。
通じる相手との日常会話でたま~に使ったりしている(笑)


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middrinn

芸新2008年11月号の特集「生誕80周年記念 手塚治虫を知るためのQ&A 100」には、
〈Q43 たとえば「ブラック・ジャック」は、雑誌連載と単行本でエピソードの収録順
がまったくちがいます。なぜそんなややこしいことを?」というのがあり、また「Q45
生前に300巻が刊行された全集、本人も情熱を注いだのでしょうね?」には、過去の
全集がどれも途中で頓挫した経験から、講談社版の作品収録順は「とにかく読者に好評
だった作品か、自分が気に入っている作品のいずれかを優先」、〈連載ものまでその
方針で順番を変えて編集しなおしたものだから、「ブラック・ジャック」では連載時
には途中から登場するピノコがいきなり第1巻第1話から現れるという矛盾も。〉^_^;
by middrinn (2018-11-03 22:26) 

enokorogusa

なるほど~。
いつもろくすっぽ調べもせずに書くものですから。
一話一話は覚えていても、そういった事情までは知りませんでした。
お恥ずかしい限りです(^^;)
そういえば手塚治虫は単行本掲載時に絵を描きなおすことも多いというような話を聞いたことがあります。
いつも詳しくご教示いただきありがとうございます。

by enokorogusa (2018-11-04 09:40) 

middrinn

肝心な玉稿への感想を書かずに、大変失礼しましたm(__)m
おっしゃる通り、どの話も素晴しく、この作品を薦める際は、
読めば分かる!の一言で足りますね(〃'∇'〃) ピノコですが、
『ギャラリーフェイク』のサラも、いつのまにか藤田玲司の
仕事にとって欠かせない存在となることに、御感想を拝読
して気付かされました(〃'∇'〃) 次回も愉しみです(^o^)丿
by middrinn (2018-11-04 10:45) 

enokorogusa

こちらこそ、貴ブログにて失礼しました。m(_ _)m
「読めば分かる!」まさにそうですね。
自分に子どもがいたら読んでほしいマンガNo.1かもしれません。
たぶん買い与えていたと思います。
これからも気の向くまま書き散らすかと思いますが、愉しんでいただければ望外の喜びです。

by enokorogusa (2018-11-04 12:08) 

燃焼豚

ブラックジャックにも、たまにだが戦闘シーンがあります。メスによる投剣ですが、ほぼ、瞬殺で勝負をつけます。達人といっていいほどの腕前ですが、診察がない日は投剣の練習をして汗を流していたりして。(笑)
by 燃焼豚 (2018-11-10 18:48) 

enokorogusa

今回読むまで忘れていましたが、少年の時にダーツを練習するエピソードがありますね。
なるほど、と思いました(^^;)
by enokorogusa (2018-11-11 15:54) 

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