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35年ぶりの再会!『SOS! 時計よとまれ』 ※ネタバレ注意 [読書]

『SOS! 時計よとまれ』 さとうまきこ/作 伊藤良子/絵 1986年

5年の学習に連載されているのを読んで以来、ずっと読みたくてかなわなかった物語。
この間の経緯のとおりで図書館からの貸し出しという形であれ、ついに再読ができた。
なかなか興奮が収まらなくて、ようやく落ち着いてきた。

内容については、こちらの記事で書いた以下の記憶はほぼ合っていた。

ある男の子(当然5年生という設定だと思う)が不思議な時計を手に入れる。
で、それが(おそらく逆に)動き出したところ、両親がどんどん若返ってしまい、子供にやがては赤ちゃんになってしまう。
そしてその時計がもうひとつあったのかどうか忘れたが、隣?に住んでた女の子の両親も同様に幼くなっていってしまう。
男の子と女の子は、何とか時計をとめようと二人でいろいろ試すがなかなかとまらない。
その一方で、ミルクを飲ませたりと、自分たちの親の世話で手一杯、疲れ果ててしまう。
そのうち「このまま親が小さくなっていったらどうなるの?」「赤ちゃんより小さくなるってどういうこと?」「この世界から消えてなくなっちゃうの?」
などという心配、というか恐怖にさいなまれて・・・

違っていたのは、女の子は隣ではなく同じマンションの1階だったこと、女の子の方は両親が離婚していて母親だけだったこと、親が元に戻らなくなるのを恐れてあまり時計をいじろうとはしなかったこと。
これくらいかな。

あと、ほかに覚えていたのは、二人が疲れ果てて、背中合わせに座り込んでいる挿絵。
まさにラブコメ成分。
この絵もちゃんと載っていた。

男の子の名前はタツヤ、女の子はリコ。
物語はタツヤの視点で書かれている。

今回読んで「へえ」と思ったのは、リコの両親が離婚して母親と二人で暮らしていたこと。
物語の終盤で明らかになる若返りの仕組みでは、リコにも両親がいた場合、親「だけ」が全員若返るためには、タツヤとリコの両親4人だけが同じ場に居合わせる必要がある。
これはなかなか場面が想像しにくい。
リコには母親しかいないことによって、リコの母だけがタツヤの両親と同じ場にいることが不自然じゃなくなり、タツヤとリコの親「全員」が若返るという話にすることができる。
とはいえ、35年も前の社会通念では、両親が離婚しているというのは結構ネガティブな要素に捉えられるような気がする。
当時の子供向けの作品でそういう設定にするのは結構勇気がいったんじゃないだろうか。

また、これもうまいと思ったのが、二人の親3人の中で、リコの親が一番年下であること。
子供も小さくなればなるほど、1年の年齢差が大きなものになってきくる。
これにより、タツヤよりもリコの方が、より切迫した状況に置かれることになる。
そして「赤ちゃんの次は・・・」という恐怖が、リコを襲うのだ。
しかしタツヤはそれに対してどうすることもできない・・・

二人はほかにもいろいろな面で悩むことになる。
結構現実的だ。
生活費はどうするんだ?
親戚に預けるといっても何て言う?
ついには小学校を休むことになる。
そして担任の先生が家までやってきたりする。

そして自分にとっては重要なのはタツヤとリコのラブコメだ(笑)
二人は深刻な事態に陥っているので決して明るい気分ではないのだが、タツヤがリコを好きなこと、将来結婚したいとまで思っていることが書かれている。
なにしろ実質的に親3人の普段の世話をしているのはリコなのだ。
タツヤもよくわかっている。
だからよけいに何とかしたいと必死で解決策を模索するのだ。

一方のリコの方はというと、あくまでタツヤ視点の物語なので、はっきりとは描かれないが、タツヤの存在がリコを支えているのは明らかだ。
リコは決して弱い女の子ではない。
むしろ気丈なほどだ。
それでも赤ちゃんになってしまった母親の世話を1人でできるほど強くはない。
タツヤの家に寝泊まりすることになる。
ついには感情的になって時計を壊そうとするがタツヤにとめられて、涙を落とす・・・

また、必定、二人は学校でも相談することが多くなる。
学校が終わるとさっさと帰宅する。
いつもいっしょにいる二人を見て周囲が冷やかさないわけがない。
いいねー。青春だ。
まだ小学生だけど。
こういうのがうらやましいと思うのは自分だけじゃあるまい(笑)

さて、この物語の終わり方について。

※ネタバレ注意※

知りたくない方は以下は読まないよう注意。
(色反転してあります)










この物語は決してありがちなハッピーエンドで終わらない。 結構印象に残りそうな終わり方だが、どうして自分は忘れてしまっていたのか不思議だ。 ひょっとして、連載から単行本になるにあたって3年の期間があるため、加筆修正されているのかもしれない。 が、それを確認するのはちょっとたいへんなので、とりあえず今はこの単行本でよしとしておく。 そもそもの原因となった不思議な時計の発明者(=落とし主)を探し当てるのだが、その本人も老人だったのがタツヤよりやや年下の少年に若返っていた。 しかし、若返った体をもとに戻す方法はないという。 落胆と怒りを感じるタツヤとリコ。 元科学者だった少年は謝罪し責任を取るとして、二人の親を育てる手助けをするという。 財産もあるから経済的にも心配はいらないと。 そして、タツヤとリコにも、自分の家に住まないかと提案する。 タツヤとリコも、子育てがいかに大変なことか身をもって体験したことで、ここまで育ててくれた親に感謝し、今度は自分たちが「親」を育てようと決心し、前を向いて歩き出すのだった。
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燃焼豚

このマンガをあちこちで探してみましたが見つからず、ちょっと残念でした。
by 燃焼豚 (2019-02-14 13:03) 

enokorogusa

返信遅くなってしまい申し訳ありません。
実はマンガではなくて児童向け小説なんです。
当時物語系書籍は全くと言っていいほど読まなかった自分が、この作品だけは面白くて何度も読みました。
そのくせ内容はほとんど忘れていたのですが(^^;)
by enokorogusa (2019-02-25 08:49) 

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