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もう一度読みたいマンガ その2『ふたり鷹』 ※ネタバレ注意 [コミック]

久しぶりに取り上げるコミックは「ふたり鷹」(作・新谷かおる)
80年代に週刊少年サンデーで連載されて人気を博し、アニメ化もされた。
書店でファンブック(なぜ今?)を見つけてしまった。
そのなかで重要場面が載っていたが、それ以外は今回も再読なしで振り返ってみる。

同じ日、同じ病院で生を受けたふたりの鷹、沢渡鷹と東条鷹。
二人は時にはライバル、時には友人としてバイクレースに挑んでいく。

主人公はどちらかというと沢渡鷹。
粗削りながらも天性のライディングテクニックでライダーとして成長していく。
一方の東条鷹は理論派。
沢渡とは全く違うアプローチでレーサーとして進化していく。

この二人のライバル関係を縦軸に、出生の秘密を横軸にストーリーは進む。
そして最終的には同じチームのライダーとしてともに勝利を目指す・・・

このマンガ、シリアスさとギャグのバランスが絶妙だ。
同時期に他誌で連載していた「エリア88」がほぼシリアスなストーリー展開なのに対し、こちらは基本シリアスなのだが、ギャグシーンがところどころに入っている。
ただ、それがストーリー展開の邪魔をしないのだ。

また、二人の鷹の出生の秘密も、ストーリーが進むにつれて明らかになっていくのだが、これがストーリーにアクセントを加えていて、単純なバイクマンガではない、人間ドラマが描かれていく。
この親子関係の描写がまたおもしろく、そして感動を呼ぶ。

当時はバイクレースが人気があり、日本でもWGP(現在のMotoGP)や鈴鹿8耐などに多くの観客が詰めかけた。
で、この作品のクライマックスは、世間ではどちらかというと地味な2輪の世界耐久選手権。
沢渡と東条は画期的な(非現実的な?)新マシンで挑戦する。
どれくらい画期的かというと、エンジンとタイヤをチェーンではなくエネルギーチューブなるもので連結し、しかも前輪にも動力を伝える、という全輪駆動のマシンだった。

「バトルホーク」と名付けられたこのマシンで、二人の鷹はレースに挑んでいく。
最終的な目標レースはボルドール24時間。
フランスのポールリカールサーキットで行われる。
実は東条はフランスと浅からぬ因縁がある。

※以下ネタバレ注意



東条は武者修行の地としてフランスのチームを選ぶ。
最初は東洋人に対して見下していたチームメイトだったが、東条のレースへのアプローチと実力に、じきに一目を置かざるを得なくなっていく。
特にチーム唯一の女性ライダーのマリーは東条のことを男性としても意識するようになる。
やがて二人はお互いを人生のパートナーとして選び、結婚することに。
ところが、式をあげる当日、式場へ向かうマリーは交通事故に巻き込まれて短い生涯を終えてしまう。

ボルドール24時間のレースに、東条はマリーの遺髪でつくった指輪をつけて挑む。
「マリーの遺髪さ。彼女もいっしょに走る」
最後を知っているとこの辺でもう涙腺がゆるみだす。

順調にレースをすすめていくチームバトルホークだが、東条が他のマシンの事故に巻き込まれてクラッシュ。
あわやリタイアかと思われたが、奇跡的にもエンジンが復活しレースを続けられることに。

しかしマシンへのダメージは大きく、数十分ものピット作業を強いられる。
なんとかレースに復帰したバトルホーク、沢渡ともう一人のライダー、アルダナの猛追でトップ集団に追い付く。

そして最後のピットイン、タイヤ無交換で時間を稼ぎ、ライダー交代、乗るのは東条だ。
東条はトップ争いをするが、消耗したタイヤで苦しい戦いに。
もうダメかと思う東条がそこに見たのは愛するマリーの幻影。
自分をいざなうマリーの幻影に引き寄せられるように東条はファイナルラップの最終コーナーへ。

もうこの時点で読んでる自分は涙ボロボロである。
ファンブックを立ち読みしてて涙をこらえるのに必死だった。
今この記事を書いてても泣けてくる。

沢渡はじめチームメンバーが固唾をのむ中、最終コーナーをトップで立ち上がってきたのはバトルホーク!
そして勝利のチェッカーフラッグ。
沢渡はじめみんな泣いている。
最後は完全に東条が主役だ。だが、それがいい。




※以上ネタバレ注意

見事に因縁のボルドール24時間に優勝した二人の鷹。
そして、短い後日談でこの作品はきれいに終了する。

ああ、読みたくなってきた・・・


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コメント 2

燃焼豚

まあ、名作が忘れた頃に世に出る事はよくあることです。親友にして宿敵、そして兄弟の物語ですが影の主役は猿渡のお母さん。この人が二人の鷹の側にいたからこそふたり鷹は一緒に走り続けられたと思う。
by 燃焼豚 (2017-11-23 18:51) 

enokorogusa

>燃焼豚さん

実は今、再読していて(^^;)、沢渡緋沙子の存在感の大きさを改めて感じているところです。
主役は二人の鷹だけじゃないですね。
by enokorogusa (2017-11-24 19:23) 

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