さて、今年もF1の日本GPが鈴鹿サーキットにやってくる。
鈴鹿で最初に開かれたのは1987年。
途中、富士スピードウェイで開催された年もあったので、鈴鹿での開催は今年がちょうど30回目だ。
F1では近年、アジアや中東などの開催が増え、ヨーロッパでの開催が少なくなる傾向にある。
そんな中、鈴鹿の30回という開催数を超えるのは、モナコ、モンツァ(イタリア)、スパ・フランコスシャン(ベルギー)、ハンガロリンク(ハンガリー)など、数えるほどしかない。
シルバーストン(イギリス)、ホッケンハイム(ドイツ)もあるが、コースレイアウトが大きく変わってしまっている。
そんな中、ほとんどレイアウトがかわらず、開催を続けている鈴鹿は、自分が思う以上に歴史あるGPとなっているのだ。
そのようなコースは敬意をこめて「オールドサーキット」と呼ばれることもある。
自分にとっては、昔住んでいたところが比較的近かったこともあって、サーキットではなく併設されている遊園地に何度も遊びに行ったことがある、身近な場所なのだ。
もちろん、全日本F2などの中継もよくTVで見ていたりしていた。
当時は星野一義と中嶋悟の2強時代だった。
なので1987年に初めてF1GPが開かれたとき、「あの鈴鹿サーキットをF1が走っている」と思うだけで興奮したものだ。
鈴鹿サーキットの特徴のひとつに、上述した他の歴史あるサーキットも同様なのだが、各コーナーに固有の名前がついている、という点がある。
近年新しくできたサーキットは、単純にターン1、ターン2、などというように番号で呼ばれることも多い。
そういうのはなんかさびしい気がする。
特に鈴鹿サーキットのコーナー名は、誰が言い出したのかがはっきりせず、レース関係者の間でなんとなく広まり、定着したものが多く、そういうのも歴史を感じさせてよい。
複合コーナーとなっている「1・2コーナー」から始まって「S字」「逆バンク」「ダンロップ」「デグナー」「ヘアピン」「スプーン」「西ストレート」「130R」「「日立オートモティブシステムズシケイン(ここはカシオトライアングルの方が馴染み深いが)」「最終コーナー」と、それぞれ名前が付いている。
F1ドライバーにとってもチャレンジングなコースとして名高いが、ひとつ残念なのは、2003年に改修された「130R」だ。
以前は、まさにその名の通り曲率半径130mのコーナーで、西ストレートで最高速度に達したマシンがわずかの減速で飛び込む、F1が開かれる全サーキットの中でも屈指の超高速コーナーとして有名だった。
名前が「130R」という曲率半径そのままなのもカッコよかった。
しかし、安全性を高めるためにランオフエリアを広くする改修工事を行った結果、曲率も変わり、現在のF1ではさほど難しくないコーナーとなってしまったのだ。
さて、そんな鈴鹿サーキットだが、自分は過去に2度だけだがF1を見に行ったことがある。
どちらも決勝レースは1・2コーナーへの侵入からS字、逆バンクまでを広く見渡せる場所で見たのだが、フリープラクティスでは他の席で見たりしていた。
そんな中でも、F1のフルスロットルの爆音を目前で聞くことができる場所がある。
そこでは鼓膜がビリビリと震えて破れるのではないかと思うくらいの爆音を体中で感じることができた。
ただ、今のF1はハイブリッドのパワーユニット(もうエンジンとは呼ばない)なので、昔のような爆音は聞くことはできないらしいが。
実際に観戦したレースの記憶となると、1994年のレースが思い出深い。
1994年といえば、アイルトン・セナが亡くなった年で、新しいチャンピオンが生まれようとしたときだ。
チャンピオン争いをしていたのはミハエル・シューマッハとデイモン・ヒル。
シューマッハのリードで迎えた日本GP。
決勝レース当日は大雨。
そう、秋の鈴鹿は結構天候が不安定なのだ。
特にこの年は雨だけでなく、非常に寒かった。
このレース、大雨のため途中で赤旗中断。
当時は2ヒート制で、中断前のタイムと中断後のタイムを合算して順位を決める方式だった。
中断後のレース(雨は降り続いている)で、シューマッハはタイヤ交換2回なのに対し、ヒルは1回。
当然、周回タイム自体はシューマッハが速いが、合計タイムで先頭なのはヒル。
お互い直接相手とレースするのではなく、タイム差とのにらみ合い。
ここで頑張ったのがヒルだ。
観客席から遠くに見える巨大ビジョンでもわかるくらい、ヒルのタイヤは限界だ。
ヘアピンなど、ズルズルになって立ち上がっていくのがよく見えた。
結局、ヒルが見事に逃げ切って、勝利を挙げた。
この頃、ヒルに対する評価はいろいろ分かれていて、鈴木亜久里などはTV解説でケチョンケチョンに言っていたが、自分はそうでもないと思っていた。
この鈴鹿のレースを見て、やっぱりヒルはすごいドライバーだと思った。
チャンピオン争いをして当然だ。
実際、後に、ヒルはチャンピオンを取った後、アロウズ・ヤマハや、ジョーダン・無限など、お世辞にもトップチームとはいえないチームで走っていたが、そこで見事な走りを見せ、かえって評価を高めることになった。
思い出話はこれくらいにしておいて(長かったけど)、さて、今年の鈴鹿では、どんなレースが見られるか。
ちなみに今、この記事は先週末のロシアGPの録画を見ながら書いている。
今年はルイス・ハミルトンがちょっと頭一つ抜けた感じの強さを見せているが、鈴鹿でも同様の強さを見せることができるか。
また、トロロッソ・ホンダはホンダの地元でいいパフォーマンスを見せられるか。
現地観戦はできないのは残念だが、楽しみに待とう。