懐かしマンガ その２ 『ナイン』 ※ネタバレ注意

もういくつかコミック記事を書いているので「懐かしマンガ」として書くのは何度目だろうと思ったらまだ2度目だった。

その作品は『ナイン』（作／あだち充）

連載は『週刊少年サンデー増刊号』（ややこしいが月刊誌である）1978年10月号～1980年11月号

アニメ化もされていて単発で3度にわたって放映されている。
（1983年5月4日、1983年12月18日、1984年9月5日）
原作連載終了より2年半ほど経ってからの放映だ。
時期的に考えると、『タッチ』の人気が高くなってきて過去のあだち作品が注目されて、それでアニメになったのだろうか。
あ、でも『みゆき』の方が先にアニメ化されていたかな？

自分はマンガとアニメ、どちらを先に見たのかよく覚えていない。
ただ、家にサンデーコミックス全5巻があったのは確かだ。

ちょくちょく訪問させていただている、ばいきんダディさんのブログで取り上げられていたので、文庫版だが久しぶりに読んでみた。
ちなみにそちらの記事は自分の記事と違って、よくまとまっていて読みやすいのでぜひ。

で、今回久しぶりに読んでみたのだが、覚えていたのは、主人公が元陸上選手（＝超俊足）だったこと、メガネをかけた選手がいたことくらい。
ちなみにメガネは主人公と同級生でエースなのだが、自分は先輩だと思い込んでいた。
あと、タッチアップの場面で、主人公が元短距離選手らしく、クラウチングスタートの体勢をとったことがあったような気がしていたが、マンガにはなかった。
あれはアニメ独自の演出だったのだろうか。

ストーリーは全く覚えていなかった。
全体の感想としては、透明感溢れるさわやかな読後感。
『タッチ』のような悲劇（和也の死）や、理不尽な困難（偽監督の邪魔）といったネガティブ要素がほとんどなく、甘酸っぱい青春が、あだち充特有の繊細な描写で描かれている。
特に、画風などもまだこの頃は少女マンガっぽいのが余計にそう感じさせるのかもしれない。

さて、あだち充といえば恋愛要素が欠かせないが、この作品も例外ではない。
三角関係だけでなく、四角、五角と広がりを見せる。
しかし主人公とヒロインは最初から両想い（ただ当初は本人達は知らない）で、多少の擦れ違いはあっても、ドロドロしたものにはならず、比較的すんなりと二人はくっつく。

で、二人はストーリー終盤で初めてのキスをするのだが、これがまた、いかにも青春というか、高校生のキスにしてはちょっと色っぽいというか、読んでいてむず痒くなるような、読んでて身もだえするような、いい雰囲気を醸し出しているのだ。
自分は小学生の頃だったのでピンとこなかったが、中学生や高校生が読んだらたまらないと思う。
このキスシーンこそあだち充の真骨頂ではないだろうか。

ところで、あだち充の作品というと「きょうだい」が結構出てくる気がする。
『タッチ』は言うまでもがな、この『ナイン』でもライバル高校のエースの弟が主人公の高校に入ってきて、主人公に好意を寄せる陸上部の女子に惚れることになる。
『みゆき』も血はつながらないが兄妹の話だ。
また、現在『ゲッサン』で連載中の『MIX』でも『タッチ』の約30年後を舞台に、やはり血のつながらない、兄弟二人が主役となっている。
これはいつもだが、ろくに下調べしないで記事を書いているので、ひょっとしたら「きょうだい」というテーマについて、あだち充がなにかしらの意味を込めているのかもしれない。

そんなわけで久しぶりに読んだ『ナイン』だが、文庫版だと全3巻と短いが、変に間延びすることなく、いい感じでまとまっていていいと思った。

さて、実は『H2』も再読しようか迷っているのだが、どうしよう。
結構長いし。
まあ、そのうち読むかも。