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ちょっと前のマンガ その3 『ARMS [アームズ] 』 ※ネタバレ注意 [コミック]

久しぶりのマンガ感想を。

自分のマンガ感想記事は以下のような前提があるのでご注意されたし。

他の感想記事を読むとすぐ影響されて、自分の言葉で書くことができない。
なので、いつものごとく、事前に調べて得る情報は連載期間など必要最小限の事実のみ。
プライオリティを主張するつもりもない。
あくまで自分の感想を垂れ流すだけ。
場合によっては壮大なネタバレがある。

というわけで、今回読んだのはこの作品。

『ARMS [アームズ] 』(作/皆川亮二 原案協力/七月鏡一)
 連載『週刊少年サンデー』1997年16号~2002年20号
 (少年サンデーコミックス 全22巻)

どうしてこの作品を読もうと思ったか。
実は一連の「アリス」の記事で、この『ARMS』が「アリス」をモチーフにしているというコメントをいただいて、元々気にはなっていた作品ではあったのだが、それが今回読んでみようとした直接のきっかけだった。

そう、実はこの作品を読むのは今回が初めてだ。
以前の記事で「1990年代のサンデーは・・・」などと偉そうなことを書いておきながら、この作品は読んでなかったのだ(^^;)。

皆川亮二といえば、前作の『スプリガン』(原作/たかしげ宙)も実は読んでない。
なんとなく画になじめなかったのが理由かな。
『スプリガン』も『『ARMS』も、いつもサンデー本誌の最後の方に載っていた気がする。

漫画雑誌の最後の方に載っている作品は人気がない、というイメージがあるが、実際は『スプリガン』も『ARMS』もそれなりに長期連載されていたので、人気がないという訳ではなかったようだ。

ちなみに、皆川亮二の次の作品である『D-Live!!』(脚本・原案・協力/横溝邦彦・氷室勲・横田直幸・七月鏡一・高野真吾・たかしげ宙・森竹ひろこ・木村恵之・東上克)は面白くて読んでた。

『ARMS』は原案協力として七月鏡一の名があるが、『拳児』(これもまた名作!)の作画担当の藤原芳秀と組んだ『ジーザス』の原作も担当している。
サンデーの読者には、ミリタリー系?マンガで名の知られた存在かも。
『ARMS』では「原案協力」という肩書きなので、「原作」とどう違うのかわからないが。

さて、やはりいつものごとく、コミックスのあらすじを引用して軽く紹介、
と思ったら、この作品、普通ならコミックスの目次ページにある「あらすじ」がない・・・
かわりに、本編最初の方のコマ外の部分にあらすじがある。
それが、前巻の最後の部分の説明しかなく、全編通したあらすじじゃない。

う~ん困った。
一応自分の拙い力で書いてみよう。

「ARMS」と呼ばれる謎の生命体を自らの体に移植された高校生、高槻涼。
同じく「ARMS」を移植された新宮隼人、巴武士、久留間恵とともに、「ARMS」を生み出した謎の組織「エグリゴリ」へ戦いを挑む。
彼らは「ARMS」の力と自分自身の意思との間で苦しみながらも、「ARMS」を巡る苛烈な戦いに巻き込まれていく。
「ARMS」の謎が解明されていく一方で、4人への攻撃もより強大なものへ。
そして、涼のガールフレンドで、死んだと思われていた赤木カツミが生きていると聞き、彼女が捕らわれているという、エグリゴリの本拠地ニューヨークへ。
そして、その戦いの先に見えてきたものは・・・
壮大なスケールで描かれた近未来的SFアクション。

こんな感じ?
まあいいや。
ウィキペディアでも見てください(^^;)


そんなわけで読んでみた。
「・・・面白い!」
もったいないことをしてたなぁ。
連載をちゃんと読んでおけばよかった。


皆川亮二の画は非常に個性的だ。
大友克洋の作風に似ていると思ったりするがこれは的外れか?
サンデーでは異色な感じがする。
そもそもこういう近未来SFアクションってサンデーにはあんまりなかったような?
岡崎つぐお『ラグナロック・ガイ』が頭に浮かぶが、こちらはほとんど覚えてないので違うかもしれない。
画も岡崎つぐおはマクロスっぽい感じ?
などと思ったら、実際に岡崎つぐおは『超時空要塞マクロスⅡ』を描いていた(^^;)

また皆川亮二の画は非常に細かい書き込みも特徴の一つだが、上手いかと言われると、微妙な部分がある。
顔がちょっとゆがんで見えたりする場面があったり。

それでも、劇画とはまた違った雰囲気で写実的な画だ。
普通、鼻の穴はブサイクになるのでマンガでは描かれることはほとんど無いと思う。
しかし、彼は女性にもちゃんと鼻の穴を部分的にではあるが描いていて、それでいてブサイクにならない(いちいち細けえな(^^;))。

凄いなと思ったのは、コマ割りだ。
コマ割りは、映画で言えばカメラワークに相当すると思う。
「引き」の画、「アップ」の画もメリハリがあって、「動き」を感じさせる。
「ページをめくる」というマンガならではの行為も上手く利用して劇的なシーンを描いている。
また、小さなコマと大きなコマを大胆に使い分け、見開き1コマの大ゴマも効果的に使っている。
特に、最終盤での見開き1コマ三連発は、トリハダもんだった。

ストーリーも壮大で、この先どうなるかわからなくてハラハラする展開もいい。
自分は今回コミックスで読んだので、最終回までどれくらいあるのか知っている状態で読んだのだが、それでも、最終回まで何があるのかわからなくてドキドキした。
もしサンデー連載時に読んでれば、それこそいつ終わるかも知らずに読むことになるので、そのドキドキ感、ハラハラ感や期待は今回読んで感じた以上のものがあっただろう。
返す返す連載中に読んでなかったことを後悔した。
見開き1コマも、サンデーの大きな誌面で見たらもっと迫力があっただろう。

登場人物についても、明らかに主人公は高槻涼なのだが、群像劇的な面もある。
涼以外の3人のARMSの少年・少女にはもちろん、その他多くのキャラクターにそれぞれ必ず見せ場が用意されていて、それがまたみんなかっこいい。
正直、涼よりもかっこいいキャラクターが何人もいる。
それでも、主人公である涼の存在感が決してなくならないのも上手い。
ちなみに自分が好きなのは、ARMSの一人である久留間恵と、超絶天才少年アル・ボーエンだ。

先に、「アリス」がモチーフに、という話をした。
『不思議の国のアリス』だけでなく『鏡の国のアリス』も使われている。
ふたつの「アリス」に出てくるキャラクターをうまく取り入れているのだ。
特に主人公は、『鏡の国のアリス』の冒頭にある意味不明な詩に出てくる謎の生物「ジャバウォック」がその自身の「ARMS」の名前となっており、その力も強大だ。
ちなみに、他の3人は、「ナイト」「白兎(ホワイトラビット)」「ハートの女王(クイーン・オブ・ハート)」となっている。

自分はこの点については、『不思議の~』だけでなく『鏡の~』も読んだあとでよかったと思う。
「なるほど!」と思う場面もしばしばあった。
『鏡の~』は『不思議の~』に比すると訳本も少なく、一般的には『不思議の~』だけ読んだという人も結構いるのではないだろうか。
その場合、『ARMS』を読むと元ネタを知らないキャラが出てくることになる。

もし、サンデー連載時に読んでいたら、『鏡の~』はおろか『不思議の~』さえ読んでいなかったので、その点での面白みはおそらく感じられなかっただろう。
今回「アリス」を読んだ後にこの作品を読むことができたのは、その点ではいいことだったと思う。

最後に。
この作品、「小学館漫画賞」を受賞してたのを、初めて知った。
だから、というわけではないが、自分が面白い!と思ったのは別に普通のことだったのだ(^^;)。


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コメント 4

middrinn

アリスをお読みになり記事にされたのが面白い漫画を読む契機となって
良かったですね(^^) 今度ブックオフで立ち読みしてみま~す(^o^)丿
by middrinn (2019-10-26 19:55) 

enokorogusa

いつかは読もうと思っていながら、なかなか手がでなかった作品なので、今回読むことができて本当によかったです。
コミックスはワイド版(全12巻)も出ているようです。
こちらで揃えてみようかな・・・
by enokorogusa (2019-10-27 15:18) 

燃焼豚

私ごときのコメントからわざわざ記事を起こしてもらいありがとうございます。本当ならもっと早く書くつもりでしたがD-live!!を古本屋で探すのに時間がかかりました。私はまだ読んでなかったんです。でも、ようやく見ることができました。面白いです。特にあれだけ働いて報酬が一万円とは、我が身を思い浮かべ、苦笑してしまいます。
by 燃焼豚 (2019-12-08 16:42) 

enokorogusa

燃焼豚さん、まずはお礼を申し上げます。
おかげさまでこの作品を読むことができました(^^)
ダーティペアのブルーレイといい、いつも貴重な情報をいただいて本当にありがとうございます。
『D-Live!!』も面白いですよね。

by enokorogusa (2019-12-08 17:58) 

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