「ソウルフード」といえば子供の頃から慣れ親しみ、その人の好みに大きな影響を与えた料理のことを指す。
もっとも、本来は1960年代のアメリカの黒人社会で生まれた食文化のことを言うらしいが、ここでは拡大解釈しておく。
そして、物心ついたころにはすでに手もとにあり、何度も読み返したマンガを「ソウルコミック」と呼ぶことにしよう。
自分には兄がいたので、自分がマンガを読めるくらいの年齢になったときには、何冊かのマンガがすぐ読める環境だった。
「ドラえもん」「サーキットの狼」「ブラックジャック」、そして、「キャプテン」。
これらが自分のソウルコミックと呼べる作品だ。
これらの作品は、掲載誌を読むことなく、単行本を読んでいた。

さて、その「キャプテン(作・ちばあきお)」。
野球に打ち込む中学生の姿を描いた傑作だ。
描かれるのはひたすら練習そして試合ばかり。
野球と関係ないシーンなど全くと言っていいほど無い。
女子キャラクターもほとんど出てこない。
女性の固有名詞は、応援の練習をするバトンガールがお互い会話をするときに一言発しただけ。
他には「松尾(という選手がいる)の母」くらいだ。
とにかく練習と試合の繰り返し。
それでいて、魔球のようなすごい技とかが出てくることもない。
ひたすら武骨に野球に打ち込む少年たちを描くだけだ。
なのに、読んでいて飽きることもない。
野球と少年たちへの深い洞察力と愛情を感じる。