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『不思議の国のアリス』 このトシになって初めて読んだ その2 [読書]

人生初『不思議の国のアリス』の件。

もう一度読んだ本をあげておこう。

1 石川澄子訳 『カラー版 不思議の国のアリス』東京図書,1989
2 脇明子訳 『愛蔵版 不思議の国のアリス』岩波書店,1998
3 楠本君恵訳 『不思議の国のアリス コンプリート・イラストレーションズ 
          テニエルのカラー挿絵全集』グラフィック社,2017
4 桑原茂夫著 『不思議の国のアリス 完全読本』河出文庫,2015 

1を読んで正直よくわからず、2を読むことに。
ところが、期待に反して?やっぱりよくわからない(^^;)
でも、2度目となると慣れてきたのか、
「こういう話なのだ」
とそのまま受け入れることができるようになってきた気が。
訳文も、1より自然な文章になっているような。

ちなみに重要な(^^;)挿絵だが、テニエルのオリジナルのカラーではなく、ハリー・G・シーカーによって彩色されて1911年に出版されたときのもの、及びそれにならって1995年にディズ・ウォリスが彩色したものを使用しているとのこと。
ちなみに、この1911年に出版されたときの彩色のアリスが、うす紫の服に縞模様の靴下という一般的なアリスのイメージを定着させたと、英マクミラン社による説明にあった。
自分は全く何もイメージを持ってなかったので、「ふーん」という感じだったが。
ちなみに妻に聞いたら、ディズニーアニメの、水色の服のイメージだ、とのこと。

そして、なおかつ、できるだけ原書と同じ位置に挿絵を置くように努めたという。
なるほど、だから文章も横書きなのか。
どうやらこの岩波書店版は、英マクミラン社が1995年に出版したものを、できるだけ体裁を崩さずに日本語版に訳したもののようだ。

いよいよ3冊目に。

この本は装丁からして豪華だ。
まずはデカイ。
本のサイズについてはよくわからないので適当な表現になるが、タテ型A4サイズの幅をさらにやや広げたくらいの大きさだ。
そして、表紙の大きな「ALICE」の文字が、赤色の箔押し?で書かれている。
さらに、天・小口・地の部分も同じ赤色の箔押し?となっていてキラキラしている。
もちろん、全ページオールカラー。

『コンプリート・イラストレーションズ・テニエルのカラー挿絵全集』
と題しているだけあって、同じシーンの挿絵が複数載っている。
オリジナルのテニエルの画、シーカー彩色の画、彩色者不明の画など、英マクミラン社がこれまでに出版してきたものに載せていた画を集めているようだ。
1864年に書いた手稿本にキャロル自身が描いた線画まで載っている。

ちなみに先の2の本では「うす紫」と書かれていたアリスの服だが、この3では青(水色)となっていて、実際の画も青いものとなっている。
カラー印刷は紙質やインクなどで微妙な違いが出るのは仕方ない。
どちらも間違ってはいないとは思うのだが、ディズニーアニメが青いのと、この3の方がより挿絵にこだわって出版されたものだということを考慮すると、「青い」方がより本来のイメージに近いのかなと思った。

で、文章の方だが、さすがに3冊めとなると自分にも耐性ができてきたのか、そのナンセンスさをそれなりに受け止められるようになってきた。
ああ、これは深く考えちゃいけないんだ、めちゃくちゃな会話や動きをそのまま楽しめばいいんだ、と。
そういうことがわかってくると、意外と面白いかも?と思えるようになってきた。

それでもまだ疑問は残る。
「クロケー(もしくはクローケー)」がどういう競技なのかの説明がこの3冊には無かった。
言葉遊びの部分も、1よりは2、2よりは3の方が多少ともわかりやすくなってはいたものの、それを堪能したとは言えないだろう。
最も、これは翻訳という作業には自ずと限界があると思うので仕方ない。
これを本当に楽しもうと思ったら英語版を読む必要があるだろう。
残念ながら自分には英語版をさらさらと読む力は無い(^^;)

さて、4冊目は解説本。
先述のようにそれぞれ訳者が違う『不思議の国のアリス』を読んだあと、この4を読んだ。
自分のような初心者には「アリ」かも。
結局本文をなぞるような中身ではあるのだが、古典を対象にした注釈のようなもので、理解の助けになった。
ただ、クロケー(この本では「クロッケー」)については「ゲートボール(あるいはゴルフ)のようなゲーム」とだけあり、詳しくはわからなかった。


最後になるがこの『不思議の国のアリス』の原題は

『 Alice's Adventures in Wonderland 』

直訳すると、「Adventures(冒険)」の部分が抜けている。
「冒険」の言葉をいれると『不思議の国のアリスの冒険』などとなるだろうか。
しかし、これなら、『不思議の国のアリス』の方が絶対イイ。

「冒険」を入れると妙に長ったらしくなる。
4拍3拍3拍「ふしぎの くにの ありす」もしくは7拍3拍「ふしぎのくにの ありす」の方が、日本語のリズムとして気持ちいい響きだ。

また、「アリス」よりも「冒険」の印象が強くなり、「アリス」の存在感が薄れてしまう。
冒険するのが誰でもいいのではなく、「アリス」であることが大事なのだ。
思い切って「 Adventures 」を訳から省いたのは素晴らしい判断だと思う。

日本で最初に『不思議の国のアリス』と訳したのはwikiによると、

  おそらく1929年(昭和4年)に『初等英文世界名著全集』の一つとして出された
  長澤才助訳注による同名の学習者向けの書であり、読み物としては1934年(昭和
  9年)に金の星社から刊行された大戸喜一郎訳のものが初と思われる

とあるが、このwikiの内容は今回読んだうち3冊目の『不思議の国のアリス』を訳した楠本君恵著の

 『翻訳の国のアリス』 (未知谷,2001)

から引いているようだ。

幸い図書館にこの本もあるようなので、ちょっと読んでみようと思う。

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コメント 4

middrinn

前回の玉稿を拝読させて頂いた直後に、小生も未読だったので、本棚から
本書(岩崎民平訳・角川文庫・1952年)と岡田忠軒訳『鏡の国のアリス』
(角川文庫,1959)を出したんですけどね(^_^;) 訳者「解説」を読むと、
言葉の「反芻」&「洒落」による「おかしさ」とあって、英語の「洒落」
を日本語に充分に置き換えられなかったことを弁解してましたね(^_^;)
by middrinn (2019-07-05 21:39) 

enokorogusa

本文最後に挙げた楠本君恵『翻訳の国のアリス』 (未知谷,2001)を早速借りてきました。
まだ全然読んでないのですが、ちらっと見た序文で「・・・キャロルの英語を日本語にする「不可能に挑戦する」、言葉遊びのおもしろさと限界とについてさぐる・・・」とありました。
翻訳を生業とする方々にとってもどうやら高い壁のようですね。
by enokorogusa (2019-07-05 22:22) 

燃焼豚

絵本では確かアリスの冒険がメインだったような。言葉遊びはうさぎが走るときやトランプの兵隊がアリスを追いかけるときの歌として、使われていたと思います。まあ、絵本であの言葉遊びは分かりにくいからそうなりますか。
by 燃焼豚 (2019-07-09 19:13) 

enokorogusa

英語に通じた翻訳家でも苦労するようですから、こども向けにわかるように訳すのは難しいのでしょうね。
自分が子供の頃に読んだらどう感じたのか、今となってはもう知る由もありませんが・・・
by enokorogusa (2019-07-10 19:02) 

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