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ソウルコミック その1「キャプテン」 [コミック]

「ソウルフード」といえば子供の頃から慣れ親しみ、その人の好みに大きな影響を与えた料理のことを指す。
もっとも、本来は1960年代のアメリカの黒人社会で生まれた食文化のことを言うらしいが、ここでは拡大解釈しておく。
そして、物心ついたころにはすでに手もとにあり、何度も読み返したマンガを「ソウルコミック」と呼ぶことにしよう。
自分には兄がいたので、自分がマンガを読めるくらいの年齢になったときには、何冊かのマンガがすぐ読める環境だった。
「ドラえもん」「サーキットの狼」「ブラックジャック」、そして、「キャプテン」。
これらが自分のソウルコミックと呼べる作品だ。
これらの作品は、掲載誌を読むことなく、単行本を読んでいた。

さて、その「キャプテン(作・ちばあきお)」。
野球に打ち込む中学生の姿を描いた傑作だ。
描かれるのはひたすら練習そして試合ばかり。
野球と関係ないシーンなど全くと言っていいほど無い。
女子キャラクターもほとんど出てこない。
女性の固有名詞は、応援の練習をするバトンガールがお互い会話をするときに一言発しただけ。
他には「松尾(という選手がいる)の母」くらいだ。
とにかく練習と試合の繰り返し。
それでいて、魔球のようなすごい技とかが出てくることもない。
ひたすら武骨に野球に打ち込む少年たちを描くだけだ。
なのに、読んでいて飽きることもない。
野球と少年たちへの深い洞察力と愛情を感じる。


また、この作品の特徴的なところは、主人公が「キャプテン」を務める選手であることだ。
これだけだと説明不足になる。
中学校という舞台では当然、新入生が入り、学年が上がり、卒業していく。
主人公が「キャプテン」ということは、その主人公が卒業してしまうことになる。
ところが、この作品では主人公が次の学年の「キャプテン」へと移り、作品が続いていくのだ。
谷口⇒丸井⇒イガラシ⇒近藤と、4学年にわたってキャプテンは受け継がれていく。
そして、丸井こそ卒業後も登場するが、谷口もイガラシも、最後の試合が終わると、きれいさっぱりと舞台から消えてしまうのだ。

この中でもイガラシは、慣例をやぶって1年生からレギュラーに抜擢され、2年次はキャプテンの丸井をおいて4番をまかされる。
そして、自身がキャプテンとなった3年次にはついに全国制覇を成し遂げるなど、この作品を通じて最も主人公らしいポジションと言える。
そんなイガラシでも、全国大会決勝戦、サヨナラ勝ちのホームインをしたシーンを最後に、舞台からスッパリと消えてしまうのだ。
この割り切り方は本当にすごいと思う。

この作品、谷口の暮らす下町の様子などはさすがに時代を感じさせるが、メインの野球のシーンについては今でも十分通じるのではないかと思う。
大きく違うと言えばバットが木製と思われる点くらいか。
それでも野球の描写の本筋とは関わらない。
未読の方がいたら、ぜひ一度読んでみてほしい。
古本屋でもなかなかみられないかもしれないが・・・


タグ:キャプテン
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コメント 4

燃焼豚

キャプテンの印象的なシーン。谷口は練習の後で父親との特訓、イガラシは落ちるシュート、丸尾と近藤は丸尾が八つ当たりで近藤を蹴飛ばすシーン。
by 燃焼豚 (2018-07-28 16:01) 

enokorogusa

>燃焼豚さん

イガラシにレギュラーを奪われた丸井は退部するつもりだったんですよね。
ところが、夜に行っていた谷口の特訓を見て自分を恥じる。
そんな丸井に谷口は次のキャプテンをまかせる。
いい話ですよね。

丸井は卒業後も近藤に睨みをきかせてましたね(^^)

by enokorogusa (2018-07-30 19:28) 

燃焼豚

驚いたのですが描き手は変わっていましたがプレイボールの続編がジャンプ系の雑誌で連載していたんですね。あの谷口、丸井、イガラシが甲子園を目指していました。少し読んだのですが面白かったです。
by 燃焼豚 (2018-08-18 18:25) 

enokorogusa

>燃焼豚さん

自分も知っているだけで見たことはなかったんですが、ちゃんと読んでみたいですね。
作者がコージィ城倉と聞いて、昔サンデーで連載していた『砂漠の野球部』を思い出して、あの絵柄で?と思ったのですが、WEBで見る限りでは、見事にちばあきおの絵柄を再現していて凄いと思いました。
青葉学院の佐野や江田川中の井口も再登場しているらしいので、ますます読みたくなりました。
by enokorogusa (2018-08-18 21:07) 

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